建設と不動産のDX化は、日本に豊かさと幸せをもたらす処方箋 ~日本No.1の建設テック、不動産テックの研究所が語るDX化の本質~(前編)

建設と不動産のDX化は、日本に豊かさと幸せをもたらす処方箋 ~日本No.1の建設テック、不動産テックの研究所が語るDX化の本質~(前編)

建設と不動産、両業界のDX化が日本にもたらす豊かさについて、株式会社アンドパッド執行役員の岡本杏莉さん、Fortec Architects 代表取締役 大江太人さんとWealthPark研究所所長の加藤が対談。前編では、建設業界と不動産業界でDX化を推進する現場の様子を中心にお伝えします。

株式会社アンドパッド 執行役員 法務部長兼アライアンス部長 岡本杏莉(おかもと あんり): 日本/NY州法弁護士。慶応義塾大学を卒業した後、西村あさひ法律事務所にて国内・クロスボーダーのM&A/Corporate 案件を担当。その後Stanford Law School(LL.M)に留学し、NYの法律事務所にて研修。2015年3月に株式会社メルカリに入社。日米の法務業務に加え、2016年3月・2018年3月の大型資金調達、2018年6月の上場(Global IPO)におけるプロジェクトマネジメントを担当。また、個人でスタートアップ等へのリーガルアドバイスも行う。2017年12月に法律事務所ZeLoに参画。2020年4月に株式会社ヤプリの社外監査役、2020年5月にAnyMind Group株式会社の社外監査役に就任。2021年2月に株式会社アンドパッド 執行役員 法務部長兼アライアンス部長に就任(現任)。法務および建設DX研究所の立ち上げを始めとする公共政策を担当。

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Fortec Architects 代表取締役 大江太人(おおえ たいと): 東京大学工学部建築学科において建築家・隈研吾氏に師事した後、株式会社竹中工務店に入社。株式会社プランテック総合計画事務所(設計事務所)・プランテックファシリティーズ(施工会社)取締役、株式会社プランテックアソシエイツ取締役副社長を経て、Fortec Architects株式会社を創業。建築士としての専門的知見とビジネスの視点を融合させ、クライアントである経営者の目線に立った建築設計・PM・CM・コンサルティングサービスを提供する。過去の主要プロジェクトとして、「Apple Marunouchi」「Apple Kawasaki」「フジマック南麻布本社ビル」「資生堂銀座ビル」「プレミスト志村三丁目」「ザ・マスターズガーデン横濱上大岡」他、生産施設や別荘建築等、多数。ハーバードビジネススクールMBA修了。

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WealthPark研究所 所長 / 投資のエヴァンジェリスト 加藤航介(かとう こうすけ):「すべての人に投資の新しい扉をひらく」ための研究、啓発のための情報発信を行なう。2021年より現職。

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「研究所」として、事業とは一歩離れた中立的な立場から業界の変革に挑む

加藤: 本日は、建設DX研究所所長の岡本さん、そしてFortec Architectsの代表、建築士の大江さんの3名で、不動産や建築業界の課題やDX化を通じた未来について語りたいと思います。

私が所属するWealthParkは、「オルタナティブ資産への投資機会を
すべての人へ届ける
」をミッションに掲げ、その事業のひとつとして、不動産業界におけるDX化の推進をお手伝いしています。加えて、不動産と社会との繋がりや、個人が資産運用を取り組む大切さを伝えるため、2021年の5月にWealthPark研究所を立ち上げ、様々な調査・研究、情報発信を行っています。偶然にも全く同じ時期に、建設業界のDX化を支えるアンドパッド様も研究所を立ち上げられておりました。岡本さん、アンドパッド社と建設DX研究所について、ご紹介いただけないでしょうか。

岡本: もちろんです。今日はお隣の業界の研究所同士でお話できることを楽しみにしておりました。

アンドパッドは「幸せを築く人を、幸せに」をミッションに掲げ、住まいや街をつくり、暮らしを豊かにする建設業の現場の方々に貢献できるDXサービスを提供しています。職人や現場監督の方々の仕事は、重複する多数のアナログな業務により長時間労働が発生しやすい環境です。そうした状況を情報技術の力で改善し、より本質的でクリエイティブな仕事に集中していただくことを目指しています。そして、建設DX研究所は、建設業界の未来に関心を寄せるすべての方々を対象とするメディアとして、DXの推進によって建設業界全体を改革していくことをミッションとしています。我々と同じ志を持った方々と手を取り合い、建設業界の未来について考えるきっかけとなるような情報発信をスタートさせたところです。

加藤:なるほど。アンドパッドおよび建設DX研究所の両者のミッションには、強く共感します。建設と不動産は大変に近しい業界ですが、不動産業界に従事されている方々も、アナログな業務が大変に多く、それゆえに長時間労働に悩まされています。DXの力で様々な効率を上げて、業界とお客様がともに幸せを得られる「正のサイクル」をどう創出していくかは、両業界にとっての共通の課題ですよね。また、その課題解決は、多くの志を持った関係者との協力が必要なこともその通りだと思います。大江さん、両業界に跨ってお仕事される建築士のお立場からは、どう思われますか?

建設・不動産業界がそれぞれに抱える課題を、DXでどう解決していけるのか

大江はい。建築士、建築コンサルタントの私の立場からも、お二人が述べられた考えはよく理解できます。人々の「住まい」を支えている両業界の社会的な役割の大きさには疑いがありません。両業界の力がDXの力で最大限発揮され、より良いサービスが社会に届くことは、日本全体の豊かさにとって大変に重要な話に思います。では、具体的にそれぞれの業界において、どのような課題をDXの力で解決していっているのか、加藤さんと岡本さんに、それぞれお聞きして宜しいでしょうか?

加藤:はい。この先の日本の不動産業界が抱える問題は、本格的な少子高齢化、人口減少社会の到来です。扱う物件数の減少や、不動産価格や賃料の下落を想像すると、業界全体が沈没してしまいそうにさえ思います。ただし、高齢化社会では、全く新しい社会ニーズが登場します。例えば、土地相続が多く発生し、若い方も自助努力による長期間での資産形成を行う必要が出てきます。総じて、社会全体での資産運用の悩みやニーズは大きなものになってくるのです。このような新しい社会ニーズへ不動産業界が対応していくにあたっては、今までの不動産取引や管理などのアナログなルーティン業務をデジタルに移行させ、新しいビジネスに取り組む時間を捻出する必要があります。不動産業界のDX化は、業界と社会の双方にとっての未来を創ることだと考えています。

岡本:建設業界の一番の課題は、深刻な人手不足です。建設業界は何と言っても巨大産業。経済規模は60兆円、就労人数は500万人にのぼります。街や道路といった社会のベーシックニーズを満たす、この先もずっと必要な産業ではありますが、職人の人数は減少の一途をたどっているんです。バブル時代は80万人だったのが、2020年は30万人、2030年は20万人になると言われています。中でも若年層の職人の減少が著しく、既に2万人を切っていると言われています。

若手の不足に苦しんでいる理由は、建設業界に対して、いわゆる「3K」(「キツイ」、「汚い」、「危険」)のイメージが強く、若い方が職人に憧れを抱きにくいこと。つまり、業界の人手不足の根本的な原因の一つは、労働環境なんですよね。統計データを見ると、建設業界は長時間労働が常態化し、週休2日を下回っている上に、一人当たりの賃金が低く、生産性も低い。このままでは人手不足は解消されず、社会の基本的なインフラを支えることすらできなくなることは目に見えています。人手不足自体を根源的に解決することはすぐには難しいとしても、DX化によって少ない人手でも業界全体の生産性を保つ、またはもっと上げていくことが、状況を改善させる解決策の1つと考えます。

DX化によるコミュニケーションと作業の効率化で人手不足を補う「ANDPAD」

大江:なるほど。不動産業界ではビジネスの転換を支えるためのDXに対して、建設業界では人材不足を支えるためのDXが必要という整理になりますね。どちらも大変にクリアになりました。

加藤:現状の業務の効率化が大切という点は共通していますね。それで岡本さん、私、建設のDXにあまり明るくないものでして、建設現場のDX化の具体的な姿を教えていただけないですか?

岡本:はい。アンドパッドが提供するDX化の効果の一例は、施工管理の見える化による現場のコミュニケーションの円滑化です。現場監督と職人さんのコミュニケーションは、電話やファックスなどアナログで行われることが大半で、工程表に変更があった場合などは伝達ミスが起きやすい。「言った、言わない」のトラブルも起こりがちですし、古い工程表で工事が進められてしまって後でやり直しになる、なんてことも起きています。

また、人手不足のため多くの現場監督は複数の現場を掛け持ちしているのですが、各現場での進捗確認のために、長時間移動をして各現場に足を運ぶのが常態化しています。さらに、デジカメで撮影した現場の写真をパソコンに取り込み、フォルダに保存をしてメールアドレスを打ち込んで送るなんていう事務作業にも忙殺されており、とにかく多忙を極めているんです。

こうした現場に、クラウドまたはスマホからアクセスできるANDPADアプリを導入していただければ、違う場所にいる関係者間で簡単に情報がシェアでき、コミュニケーションが円滑になります。皆が最新の工程表にアクセスできますし、現場の職人さんがスマホで撮影した写真を共有することで、現場監督はリモートで工事の進捗を確認できます。コミュニケーションと作業が効率化されることで、少ない人手で仕事を進めることができるのです。

加藤:なるほど。建設現場のコミュニケーションや作業がより円滑になっていく様子が、目に浮かびました。

アプリを活用していただくカギは、丁寧なフォローアップの積み重ね

大江:ところで、ANDPADやWealthPark Businessといったアプリのユーザーの年齢層は高いのではと推測します。アプリを手元の機器にインストールしてもらい、実際に活用していただく上では、難しさもあったのではないでしょうか。

加藤:そうですね。まず、インストールと初期設定まで、ユーザーである個人不動産オーナー様に、地道に丁寧にご説明差し上げることが必要です。一方で、この10年の間でスマホはとても使いやすくなっており、一度ログイン設定ができてしまえば、その後は指紋認証や顔認証機能でストレスなく直感的に使って頂けるため、紙や電話よりアプリの方が便利で楽だという効用を実感していただきやすくなりました。

そして、個人オーナー様の使用を促してくださる不動産管理会社の力によるところも大きいです。各社ともDX化による自社内の生産性の向上と、お客様との繋がりを強めるメリットを評価してくださり、お客様のアプリ実装とフォローアップを積極的に行ってくださっています。岡本さんのところでは如何でしょうか?

岡本:はい。まず、建設業界の職人さんの3人に1人以上は高齢者の方でして、スマホにアプリをインストールして実際に使って頂けるかは、現場の生産性を上げて頂くためのとても大切なポイントですね。

2016年から国土交通省は「i-Construction」を掲げ建設業のICT化を強く推しており、大手ゼネコンの建設現場や、大型の公共工事案件については現場でのデジタル化の動きがかなり進んでいます。そして、それはコロナ禍でさらに加速していると思います。一方で、アンドパッドのユーザーが対象としている住宅工事の領域や、地方の中小建設会社様や工務店様の現場のデジタル化はなかなか進んでいないのが現状です。ここ数年でスマホを使われる職人さんがとても増えたこともあり、ANDPADアプリを現場で使っていただけるようにはなってきましたが、丁寧な使い方の説明が、引き続き、大変に重要ですね。

建設元請会社様がANDPADアプリを導入すると決められた場合には、その協力会社様や職人さんたちも含めて、アプリのダウンロード方法から始まり基本的な使い方の丁寧なご説明をさせて頂いています。今では年間6万人を超える規模でこのような説明会を実施しています。そのような草の根的な活動でお客様に寄り添うことが大切ですよね。

後編へ続く

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