“学び”こそが人生と不動産投資の原点(前編)

“学び”こそが人生と不動産投資の原点(前編)

不動産コンサルティング業を展開する「みらいずコンサルティング株式会社」代表取締役の今井基次さんとWealthPark研究所所長の加藤が「不動産投資を通した学び」をテーマに対談。収入や資産の柱を複数立てることで時代の変化に適応していく大切さ、初心者・経験者ともに陥りやすい不動産投資の3つの注意点、不動産管理会社が包括的な資産運用パートナーの役割を果たすことの重要性について深堀します。

今井基次 (いまい もとつぐ): 静岡県浜松市出身。幼少の頃から一人旅をしていたことがきっかけで、バックパッカーとして世界を旅する。2000年から不動産業に携わり、全国の不動産業者へのコンサルティングや、不動産経営者向けの講演活動を行う。自身の不動産業者・不動産オーナーとしての経験をもとにした、コンサルティングやユーモアのある講演・研修は、これまで3万人を超える業界関係者や不動産オーナーが聴講・受講し、業界内外からも好評を得ている。著書に『ラクして稼ぐ不動産投資33の法則 ――成功大家さんへの道は「管理会社」で決まる! 』。みらいずコンサルティング株式会社 代表取締役。

WealthPark研究所 所長 加藤航介(かとう こうすけ)‐ プレジデント/インベストメント・エバンジェリスト:「すべての人に投資の新しい扉をひらく」ための研究、啓発のための情報発信を行なう。2021年より現職。

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時代の転換期を生き抜く術を身につけることの重要性

加藤: 本日は、不動産運営のコンサルティング会社を経営され、自身も不動産投資家である今井さんをお招きして、独自の原体験を踏まえた不動産投資や副業へのお考えを、お伺いしていけたらと思っております。今井さんは若かりし頃に世界中を飛び回り、その後に不動産業界に身を置かれ、米国の不動産資格の先生としてご活躍したり、独立されたりと、ちょっと普通ではないご経歴で、大変に興味を持っています。まずは、これまでの人生を中心にお聞きしてよろしいでしょうか?

今井: はは。私の場合、両親の育て方が、いわゆる良い学校を出て良い会社に就職するという王道のレールに乗せるものではなかったので、興味のあることに素直に時間を使ってきた人生です。おっしゃるように若い頃は海外で自由な生活をしていた期間が長かったのですが、今振り返ってみると、時代の変化に対応する意識と実行力が身に付いたのかなと思います。一度きりの人生ですから、社会環境や会社にあまり依存せず、できる限り自身のチャレンジをしていきたいというのが、私の基本的な人生観ですね。

加藤:とても素晴らしいと思います。他の先進国では所得水準が上昇傾向にある一方で、この30年の間、日本の所得水準は変わっていません。例えば、他の先進国と比べてなぜ日本の株価は上がらないのか。さまざまな要因があると思いますが、日本人は優秀であるとか、会社が守ってくれるといった、過去の成功体験から抜け出せず、変化への危機感を持てなかったことが一因と考えます。

それで、今井さんは、常に自分を変化させながら生きる手段として、多くの方が副業を持つことを推奨されていらっしゃいます。ご著書『ラクして稼ぐ不動産投資33の法則 ――成功大家さんへの道は「管理会社」で決まる! 』などでも、副業禁止に警鐘をならしているパートなどは面白く拝見しました。

今井: はい。そうですね。副業禁止に対して警鐘をならすのは、会社が副業を禁じてしまうと、従業員のリソースがすべて会社のものとなってしまい、彼らの人生の可能性を摘んでいることになる、と考えるからです。大切なのは、自分の価値を伸ばせるフィールドを複数作っておくことだと思います。人生に何かあっても前へ進めるように、収入や資産の柱を複数立てるための努力とチャレンジは、これからの時代は重要であると考えています。

加藤: なるほど。弊社WealthParkも、会社のビジョンに「Be Alternative」を掲げていますが、個人がさまざまな「選択の自由」を持つ社会を目指しています。おっしゃる通り、社会情勢や世界経済はめまぐるしく変容しており、今は自分の価値が発揮できているフィールドが、ある日突然なくなってしまってもおかしくない。だからこそ、自分と社会との結びつきを増やしておく必要があるのは納得です。私は40代ですが、平均余命はどんどん延びていますし、自分としてもまだまだ変化をする心づもりでいます。今井さんが世界各国へ暮らされてきた選択は人生への投資であった訳で、投資とは金融投資や不動産投資だけではなく、思い切った経験を買うなどの自分への投資への意識も大切と思います。

今井: 私の場合は単なる遊びでしたが(笑)、それでも確かに海外での経験は自分を大きくしてくれました。日本は安全で特殊な国なので、私の子供を見ていても、守られ過ぎている気がします。言葉が上手に話せないまま海外に飛び出すだけでも、世界の人々との価値観の違いを感じることはできます。時には自分の弱さと対峙し、机の上の勉強だけでは得られない経験を培うためには、自分の知らない土地に身を投じることは、意外に大切なのかなと思います。

加藤: 自分が今いる環境の現状に気付くこと、これから世の中がどう変わっていくか、その中で自分の価値や人生をどう表現していくか、そうしたことを見定める意味でも、複数のモノサシが必要と思います。海外に飛び出すことで得られる、物事を多軸でとらえられるスキルは大事ですね。

初心者も経験者も陥りやすい、不動産投資の3つの注意点

加藤: では、今井さんの人生における次のステージであり、ご専門の「不動産投資」について、これより具体的なお話を伺っていければと思います。

ご著書も読ませていただきましたが、「管理会社選びを軸としたオーナー目線」という立ち位置を貫かれていらっしゃり、また巷の入門書からはもう一歩二歩踏み込んでおり、帯のコピーの通り、不動産投資の「2冊目の教科書」としてとても勉強になりました。中でも、不動産投資を行う上での3つの問題が印象に残りました。

①「オーナーになりたい問題(見栄を張るため)」

②「融資さえつけば買えてしまう問題」

③「節税という目くらまし問題」

これ、とてもよく分かります。強く意識していないと、危ない問題ですね。一つずつ解説してもらえますか?

今井: はい。まず「オーナーになりたい問題」については、投資用の不動産を持つことを一つのステータスと見る風潮があるため、オーナーになること自体が目的化しやすいということです。そのため物件への冷静な判断ができなくなり、不良物件でも購入してしまうことが十分に起こり得るんです。次の、「融資さえつけば買えてしまう問題」は、融資がつくならば今は自己資金を出さずとも財布が痛むことはないので、例え不良物件であっても購入に気持ちに弾みがつきやすいのです。そして「節税という目くらまし問題」は、そもそもキャッシュフローはマイナスに対して「節税」ができたとしても、実質的に損をすることが普通であることです。そして、多くの場合、この3つは密接につながっています。

私は個人向けに不動産購入のコンサルティングも行っていますが、一般の方の不動産投資の基礎知識は思った以上に浸透していない、と感じています。これは個人の資質というよりも、お金のリテラシーを上げる仕組みが社会に整っていないことに問題を感じます。お金の基本的な知識は世の中を生きるために必須です。主要5教科に加えて「お金」の科目が必要であると思います。

不動産管理会社は、長期的な資産形成を伴走してくれる重要なパートナー

加藤: 一昔前の日本では、個人が銀行預金をもつこと自体が、意図せずとも日本の経済成長に貢献していましたが、現在は自分自身で預金以外の資産運用をしていかないと個人の資産も経済も成長していきません。資産運用や、社会全体とお金の役割の基礎知識の底上げは重要なポイントだと思います。

ご著書の中では、①基礎教育の段階で一定のマネーリテラシーを上げること、②社会に出てからは自分の資産運用を伴走してくれるメンターやトレーナー的な存在を見つけておくこと、を推奨されていますよね。そして、不動産管理会社は②の存在になっていくべきだとのご主張を見たときに、確かにそうだと思いました。不動産管理会社の役割は、税理士、資産アドバイザー(IFA)やファイナンシャルプランナー(FP)と同じく、お金の「かかりつけ医」なんだなと、腑に落ちました。これから不動産管理会社はどのように進んでいくべきでしょうか。金融投資と不動産投資の双方を資産運用の文脈で包括的に考えるなり、他分野のプロフェッショナルと連携していくなり、できるのでしょうか?

今井: 個人が資産運用を始めるときの困りごとは、誰に相談したら良いのか分からないことです。極端な話、不動産会社に聞けば物件を、証券会社に聞けば株を、FPに聞けば保険を勧められるのではないか、そんなイメージを持たれている方が多いと思います。そんなとき、何かを販売する訳ではない中立的な存在として、不動産管理会社がうまく機能すれば良いと思いますね。

そして、本業の不動産運用の側面でも、より力を磨くべきだと思います。全国には数多の管理会社が存在しますが、誰に任せるかで物件の資産価値は大きく変わるということを、投資家の皆さんに知っていただきたいです。例えば、私が首都圏で所有している木造アパートは、退去が出る度に家賃を上げているのに、大体1週間で申込みが決まります。地場に入りついている管理会社が優秀で、率先してオーナーである私に賃上げを提案し、客付けに動いてくれるからです。

この物件は新築ではありませんが、開発中のエリアにあり、人口と共に駅の乗降者数も増えているんです。そういう環境の中で、デザイン性が高く、駅から徒歩5分のこの物件のポテンシャルを適切に評価して値上げを提案してくれるんですね。昨今はインフレによる原状回復資材の高騰もあり、本来は家賃も上げていきたいところですが、日本では平均所得が上がらない環境のため、良くも悪くも家賃が安定している状態です。だからこそ、オーナーのために合理的な賃上げを提案してくれる管理会社を選ぶことは、資産運用に大きなメリットをもたらします。

後編へ続く

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