株式会社プロフィッツにて取締役投資責任者を務める玉真さんとWealthPark研究所所長の加藤が対談。前編では、不動産投資の社会的な役割・意義と不動産投資の魅力についてお聞きしました。

株式会社プロフィッツ 取締役投資責任者 玉真永棋(たまま えいき): 旧大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツで不良債権投資を担当した後、ラサール不動産投資顧問で不動産投資、新生銀行で不動産ノンリコースローン融資に携わる。直近はADIA(アブダビ投資庁)不動産投資部門にてアジアパシフィック地域の不動産運用を担う。2002年慶応義塾大学経済学部卒業、2011年米コロンビア大学大学院不動産開発専攻科修了、2021年米ハーバードビジネススクールGeneral Management Program修了。英国王立不動産鑑定士協会フェロー(MRICS)、CFA協会認定証券アナリスト(CFA)。

WealthPark研究所 所長 / 投資のエヴァンジェリスト 加藤航介(かとう こうすけ):「すべての人に投資の新しい扉をひらく」ための研究、啓発のための情報発信を行なう。2021年より現職。
不動産投資の社会的な役割・意義とは
加藤:今回は、株式会社プロフィッツ様に取締役投資責任者(CIO)として参画されたばかりの玉真さんをお迎えし、グローバルな視点から不動産投資の本質に切り込みたいと思います。玉真さんと私が初めてお会いしたのは、お互いにコロンビア大学大学院に留学中の10年以上前で、テニスもよくしていましたよね。
その後、玉真さんは複数の企業でキャリアを積まれ、直近では、世界最大級の政府系ファンドAbu Dhabi Investment Authority(アブダビ投資庁。呼称はADIA[読み:アディア])で9年にわたって、アジアパシフィック地域の不動産運用を担われていました。政府系ファンドはソブリン・ウェルス・ファンドと呼ばれており、ソブリンは「国」という意味ですが、世界各国では国家の大きな資金を世界中から集めた優秀な人材で資産運用しているわけです。玉真さんは、真にグローバルでプロフェッショナルなチームの一員として、大変に貴重なご経験を積まれたのだと思います。つい先日、日本に帰国され、国内外の不動産投資に関するご知見やご経験を活かし、プロフィッツ様では不動産ファンド事業の拡大や不動産アドバイザリーサービスを率いられると伺っています。
玉真:ご紹介いただき、ありがとうございます。ADIAでは、不動産部門アジアパシフィック地域のシニアマネジメントチームに属し、唯一の日本人メンバーとして、主に日本・韓国・インドの不動産投資の意思決定に携わっていました。プロフィッツでは、日本に拠点がない海外投資家への不動産アドバイザリー業務及び国内投資家・富裕層への海外不動産投資アドバイザリー業務の展開に注力しております。なお、当社の資産運用残高は2022年3末時点で約250億円に到達する見込みです。

加藤:今後のご活躍がますます楽しみですね。それでは、まずは「不動産投資の社会的役割」からお話しさせてください。私はプロとして20年以上、投資関係の仕事をしていますが、最初の頃は、利回りやバリュエーションといった数値的指標で投資を見ることにこだわりを持っていました。ただ、長く続ければ続けるほど、投資の先にある実体経済や人の活動といった数字では表せられない側面を強く意識するようになりました。
今では、投資そのものの社会的な役割に一番の関心があり、社会に対して良い役割を果たせる資産こそが、投資家に長期に良いリターンをもたらせる優良資産なのだという考えに至っています。不動産は社会への貢献性が比較的見えやすい資産だと思いますが、世界の最前線で不動産投資家としてご活躍されていた玉真さんに、不動産投資の社会的な役割や意義を再定義していただけたらと思います。
街や暮らしの変化が見えるのが不動産投資の魅力
玉真:不動産投資の社会的役割を一言でいうと、街づくりや暮らしへの貢献になるのではないでしょうか。投資の成果を実感できる点において、不動産は株式や債券などの他の投資資産とは異なる性質を持っていると考えます。私が不動産投資を行う理由もそこにあって、実際、街や暮らしに貢献できることに楽しさや喜びを感じています。不動産投資を行う方は、多かれ少なかれ同じ感覚だと思いますね。
また、不動産開発に大きな資金を投じ、新しい住宅地域や商業施設をつくることは、そこにまったく新しいコミュニティをつくることであり、日本のような先進国でもその社会的役割は見えやすいと思います。さらにいうと、私がADIAで担当していたインドのような新興国においては、こうした不動産投資が国づくりに直結するほどのダイナミックな役割を果たしています。私が実際に関わったインドの案件では、不足している住宅やオフィス、商業施設の供給が、平均寿命や教育レベル、国自体の豊かさを引き上げていくことを肌で感じることができました。

加藤:なるほど。インドに限らず、新興国の例は不動産投資の意義を如実に表しますね。その国の寿命や教育を変えるわけですから。開発を進めたい国が、世界の投資資金を呼び込み、お互いがWin-Winになるような不動産投資が適切に行われれば、長期的にまったく違う世界をつくっていけるのだと思います。
玉真:そうですね。次に、すでに建っている物件をバリューアップさせていくことも不動産投資の一つのあり方であり、社会的役割でもあります。時代によって働き方や暮らし方が変わるように、土地の使い方も変わります。例えば、東京のオフィスは拡大化・高層化の傾向が進んでおり、特にコロナ後は、シェアオフィスといったフレキシブルなオフィスの数も増加したことから、中小規模のオフィスエリアの一部は住宅街に変容しています。したがって、先進国では、そうした時代の変化に応じて、新しい土地や物件を有効活用していくための提案も求められるようになっています。住宅物件の平均寿命が短かった日本のマーケットでも、最近では「100年建築」というコンセプトが出てきましたし、これからますます不動産投資におけるバリューアップの重要性は増すと見ています。
加藤:衣食住は生活の基本であり、豊かな社会の土台ですよね。不動産投資に参加して長期的に時代に即した街づくりに貢献していくことは、社会の豊かさや幸せを生み出すのだと改めて感じました。
不動産投資の面白さは、自分で手を加えられることにある
加藤:玉真さんは、個人としても不動産投資をされていらっしゃると伺っています。個人投資家の視点で、不動産投資の面白さはどこにあるとお考えでしょうか。
玉真:不動産投資の面白さは、自分でその不動産や経営に手を入れられることにあると思います。規模の違いはありますが、ワンルームであれ、中古の一軒家であれ、大規模な複合開発であれ、自分が考えたビジネスプランを実行して、不動産経営に直接関わっていけることが不動産投資の魅力ではないでしょうか。
例えば、格付けがトリプルAの国債は安定していますが、自分がその投資した資金の使途を決められるわけでもなく、リターンは単なる時間価値ですよね。株式投資も、投資を判断するために社会のトレンドを読んだり、財務分析をしたりはしますが、最終的にはその企業の従業員やマネジメント層の方に運営を任せることになります。
一方、不動産投資は、他人に任せる側面もありながら自分で手を加えられる部分も残っています。また、土地には根本的な価値があるので、投資額の一定割合は守られている点も魅力です。ですので、個人投資家の視点から見ると、安心感もありながら、自分自身で投資という長距離ドライブを運転しているという手触り感があるところに、面白さを感じますね。
加藤:私も個人で不動産投資に取り組んでいますが、手を加えられるという意味では、「投資」というよりも「事業」という表現が正しいのでしょう。おっしゃる通り、格付けがトリプルAの国債に投資をするだけでは、その国の政治に関与することはできません。また、株式投資においても、取締役会に参加したり、自ら取締役に就任したりする立場でないと「事業」に参加しているという実感は持ちづらいでしょう。他人にお任せするのではなく、一つの事業プロジェクトとして自ら責任を追う不動産投資には、独自の面白さがありますよね。

玉真:そうですね。不動産投資に魅力を感じる2点目は、トータルリターン(投資リターン全体)の中でインカム部分が大きな割合を占めていることです。家賃収入として一定程度のインカムが長期的に返ってくることは、個人投資家の人生設計においても、機関投資家の戦略設計においても魅力的です。
良質な不動産であれば、インカムの額は固定ではなく、GDP成長に沿いながら徐々に増加していきます。これは、投資元本部分の増加というキャピタルゲインのリターンに重きが置かれている株式とはまったく違う性質だと思います。3点目はインフレに強い点です。自分の資産を守るために、インフレに対するヘッジとして、投資ポートフォリオに不動産を入れておくことをおすすめしたいですね。
まとめますと、不動産投資は守りに強く、自分で手を加えてリターンを上げられるところが、面白さであり魅力と思います。ミドルリスク・ミドルリターンという特性を持ち、この街、この物件がどうなっているか、自分の肌で感じられることも良い点だと思います。
加藤:資産運用の目的は、突き詰めると自らの購買力の維持であり、私も個人のポートフォリオには不動産を入れるべきだと考えています。また、これは余談ですが、私の祖父は生涯で10回ぐらい起業しているのですが、60代前半で最後にチャレンジしたのが不動産業だったのです。しかも30年弱、一番長く続けていました(笑)。そうしたことからも、不動産は安定して資産を運用していくのに適した分野なのだろうと思います。

(後編へ続く)