【イベントレポート】「もしも投資の無い国に生まれたら?- 自分、お金、社会の本当がわかる」@渋谷教育学園渋谷中学高等学校(後編)

【イベントレポート】「もしも投資の無い国に生まれたら?- 自分、お金、社会の本当がわかる」@渋谷教育学園渋谷中学高等学校(後編)

2023年3月某日、WealthPark研究所による中高生向けワークショップ「もしも投資の無い国に生まれたら?- 自分、お金、社会の本当がわかる」を開催しました。このワークショップが目指すのは、これから社会とかかわりながら自分の人生をデザインしていく10代の生徒さんに、投資という社会参加を知ってもらうこと、そして、新しい選択肢にチャレンジする楽しさを感じてもらうこと。そんなこれまでにない切り口のお金と投資の学びに、「自調自考」を教育理念に掲げ、世界に通じる自律型人材の育成を実践する渋谷教育学園渋谷中学高等学校が賛同してくださり、今回の実施に至りました。

中学校1年生から高校2年生までの30名の生徒さんと、クイズやゲームを交えながら自分、お金、社会、世界について一緒に考えた2日間・合計5時間の一部を、前編・後編の2回にわたってレポートします。

レポートの前編はこちら

3限「世界の国から見える投資」

2日目は世界に視点を広げて、投資が社会や個人にもたらす効力について学んでいきます。これまで架空の国の王様や平民の立場から社会を見つめてきましたが、この日は宿題に出ていた実際にある国(ウクライナ、フランス、ラオス、アメリカ)の予算を預かる大臣の立場からスタート。まずは戦時下にあるウクライナの大臣として、同じグループの他の大臣たちと一緒に「人々と社会が豊かで幸せになるために、今、どのような投資を行うべきか?」を考え、目の前に広げられた18枚の投資先カードに自分のコインを置いていきます。

「やっぱり軍隊への投資は必要だよね」、「怪我人に対応する病院にも投資しないと」と、自分のコインを置いていく生徒さんたち。

一通り置き終わった後、グループごとに国家予算の使い途について発表してもらうと、「軍隊、農業、電力・ガス・水道といった、国民の命を守るために今必要な投資を行いつつ、スタートアップや教育といった未来をつくるための投資も行いたい」と、短期と長期の両方の視点でコインを置いたことを説明してくれました。また、美術館・アートギャラリーにも投資したグループは、「戦時下だからこそ国民の精神を安定させるために、アートにも投資する」という意見を述べてくれました。どのグループも正しい投資に大切な利他的・長期的な視点を持って投資先を考えてくれました。素晴らしい!

ゲームのやり方に慣れたところで、今度は順番にフランス、ラオス、アメリカ、そして最後は日本に国を変えて、人々と社会が豊かで幸せになるために、今投資すべきものを決めていきます。ウクライナのときは軍事に集中した予算配分が多く見られましたが、今度は一人一人の大臣の考えがより前面に出てきます。

大臣の立場から、その国が長期的に豊かになるために、国民から預かった税金(コイン)をどこに投じるべきかを決めていく。これを国を変えて繰り返したことで見えてきたのは、国、つまり時と状況が変わると、必要な投資も変わるということです。投資には正解がなく、自分の頭で豊かさと幸せを考えながら行っていかなければならないという気づきが得られました。

続いて、登場したのは「政府・民間シート」。これまでは大臣の立場で投資を行なってきましたが、今度は18枚の投資先カードを、政府と民間のいずれか、または両方で担われるべきかをグループで考え、シートの上に分類してもらいました。

「年金と軍隊は政府だよね」、「アートは民間じゃない?」、「コロナ禍では政府が支援した方がいいよね」、「保育所はどうする?」、「学校は私立もあるよね」とディスカッションしながら置いていきます。

分類の結果、民間または政府と民間の両方で担っていくべきだと判断した投資先が浮かび上がりました。最後の4限目では、これらの民間投資、つまりは「私たちが担っていくべき投資」についていよいよ考えていきます。

4限「新しい選択肢にチャレンジしよう」

最後の4限では、いよいよ私たちが行うべき投資について見ていきます。3限で政府と民間にそれぞれ振り分けた投資先カードを目の前にしてみると、民間が担うべき投資先は意外に多いようです。言い換えれば、この投資範囲においては民間つまりは私たちでお金を回していかなければ、豊かな社会がつくれないということ。1日目の「お金の投資は社会参加である」という気づきに改めてつながっていきますね。

そこで、お金を社会参加させるというという耳慣れない概念を、仕組みと一緒にさらに詳しく学んでいきます。どうやら世の中には「社会参加しないお金」と「社会参加するお金」があるようです。

左上のように個人が現金のまま保持しているお金は、そのまま何も生み出さず、社会に参加することができません。対して、右上のように預金、国債、株券、不動産に形を変えたお金は、社会インフラ・モノ・サービス・街をつくり、社会に参加することができるのです。

仕組みがわかったところで、続いてのゲームへ。シート上の政府の範囲に置かれた投資先カードはすべて取り除き、民間が行うべき投資先カードのみを残します。そこからグループで相談しながら、投資先カードにその投資先とつながっていると思われる、預金、国債、株券、不動産、その他の色別の投資コインを置いてもらいました。

少し難しかったかもしれませんが、「どんなものでも土地や建物は必要だから、すべての投資先カードに不動産のコインは置いた」、「リターンの観点で考えた。例えば、リターンがそんなに返ってこないような学校には、銀行はお金を出さないのではないか。逆に安定している大企業には投資しそう」、「買い物施設とレストランに国債のコインを置かなかった以外は、すべての投資先にすべてのコインを置いた。いずれもどこかで何らかのつながりがあるのではないか」といった考察を発表してくれました。民間のお金の投資と社会の接続点についてしっかりと考えを深めてもらえたようです。こうしたワークを通じて、政府にすべての投資を任せるのではなく、個人がお金の投資に参加することで、社会は豊かで幸せになるという気づきが得られました。

さて、続いて舞台は架空の宇宙コロニーに移動します。

グループの宇宙コロニーごとに認められた資産の形は、不動産、ワイン・ウィスキー、アート、ベンチャー企業、スニーカーの5種類。今から30年後、自分達のコロニーが、他のコロニーや地球と比べてどうなっているか、何が違うのか、グループで考えてもらいました。

あり得ない設定に会場は盛り上がり、「アートでしかお金の社会参加ができなければ、誰もが自分の美的センスを磨かないといけない社会になる」、「ベンチャー企業にしか投資できないと、ベンチャー企業が続出するのに対してメジャーな企業が生まれず、安定した製品ができないのではないか」、「スニーカーを履けなくなっちゃうのでは」、「ワイン・ウィスキーの偽造が起きて、ソムリエの価値が上がりそう」といった、ユニークで説得力のある意見が続々と登場。極論で考えてみたことで、お金の社会参加の形によって社会そのものが変化すること、時には投資によって社会に混乱が起きることがわかりました。

宇宙コロニーで空想を働かせた後は再び現実に戻り、世界の中の日本についても見ていきました。

日本人の資産は日本の資産にほぼ100%向かっています。投資の形や方法に正解はないものの、世界経済はつながっているにもかかわらず、日本の金融資産が自国に集中していることの意味合いについても、皆で考えていきました。

世界や日本の過去や現在のデータを分析する中でわかってきたのは、①社会は投資の積み重ねでつくられており、長期的にお金を誰かに委ね、その先の社会の豊かさをつくっていくことが大事であること、②これからは世界のアイディアや才能に投資すること、そして世界から投資を受け入れることが重要になってくるということでした。こうした学びを踏まえて、「将来、どのような人生と投資に向き合いたいか?」というモデレーターの加藤からの最後の問いによって、2日間・合計5時間にわたるワークショップは締め括られました。

ワークショップを終えて

10代の皆さんがこれから自分らしい人生をデザインしていくには、自己投資やお金の投資をうまく活用して、新しい選択肢を増やし、挑戦していくことが必要となるでしょう。長期的・利他的な自己投資やお金の投資は、自分の人生のみならず、社会を豊かにするものであり、立派な社会参加です。本ワークショップを通じて、投資という切り口から自分とお金と社会のつながりを知り、自分の選択で人生を切り拓いていく楽しさを感じ取ってもらえたら、WealthPark研究所として嬉しく思います。

まさに「自調自考」の姿勢で積極的に参加してくださった渋谷教育学園渋谷中学高等学校の生徒の皆さん、多方面からサポートしてくださった先生方、本当にありがとうございました!

アンケートから

最後に、参加してくださった生徒さんの感想の一部をご紹介します。

WealthPark研究所では、今後もお金や投資にかかわるユニークなワークショップを企画・運営していきます。乞うご期待ください!

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